映画ちいかわ 人魚の島のひみつ-いつまでも 絶えることなく、友達
「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」を観た。
うん、このカテゴリは「Books & Insights」なのに映画かよ、と思いましたよね。
たしかにその通りです。BookからMovieへ幅を広げてしまいました。
すみません。
けど今回だけ、映画を語らせてください。
ていうことで前置きはここらで。はじめます。
そもそも日本のアニメに興味がない。
金曜ロードショーなどでたびたび上映されるジブリ映画。「バルス」と皆が唱えていても、「?」という顔しかできず、美容院のオーナーからは非国民扱いされている。
ある時は、出張先、複数名で乗車したタクシーにて名探偵コナン談義が始まり、数十分、タクシーの窓と一体化し続けたこともある。
あれは社会人生活のつらかった瞬間ベスト50に確実にランクインしている。
そんな自分だが、ちいかわについては少し心得ている。
ちいかわは「ワァ」くらいしか言わないこと。ハチワレだけ日本語がうまいこと。うさぎが自由奔放なこと。ちいかわたちのラジオ体操の音源がスーパーの呼び込み君であること。ちいかわが草むしり検定5級に落ちてしまったこと。
日本のアニメに疎い自分としては、少しどころかまあまあ知っている、に昇格してもよいレベルである。
さて、今年は映画館へ足を運ぶ機会も多く、その予告で、ちいかわが夏に映画上映されることは知っていた。
でも観に行く気はなかった。主要メンバーでハチワレくらいしか喋らないのにどうやって成立させるんだ!?と若干気にはなったが。
しかし上映開始から1か月が経ったころ、知人による強烈なレコメンドを受け、少し風向きが変わった。
なぜか。
第一に、その知人とは四半期決算並の頻度でしか連絡を取り合っていない。そんな距離感の人がわざわざ連絡を寄こしてきた。時候の挨拶もなしに、ちいかわのことだけを伝えるために、だ。
第二に、その知人はちいかわを全く知らないのだ。もちろんちいかわが呼び込み君でラジオ体操をしていることなんて絶対に知らないだろう。
そんな状態でよく観に行ったなァとも思うが、鑑賞後、もう一度観たいと思うくらいに何かが心に響いたらしい。
そしてちょうど同じころ、ヤフーニュース等でも、ちいかわの映画がどうも子供向けではないらしい、という言が広まっていた。
でも映画代、2,200円だ。めちゃくちゃ高い。
割引を使ってどうにか1,400円ほどまでは抑えられる算段だが、1,400円を払って観る価値はあるのか。
自分の金銭の価値基準は少し頑ななところがある。
自分にとって琴線に触れる物、心から楽しめる人との体験にはたとえ高額でも迷わずお金を使う(もちろん限度はある)。
一方で、どんなに安かったり世間で強烈に流行っていたりしても、自分の琴線に触れない物事には絶対にお金を落とさない。
そういう人間にとって一番頭を悩ますのが、「琴線には触れていないけど、気になってはいるもの」の部類だ。
ちいかわがまさにそれである。
今や、家を出て帰るまでのどこかで必ず一回はちいかわを見かける時代になった。
自分から接触しなくてもちいかわ側からやってくるし、目に入って嫌な気分は全くしない。
でも自分から情報を集めたいとは思わない。
でもこの映画の何が人々を震撼させているのかは気になる。
でも震撼というくらいだから、仮に鑑賞後感が悪いまま心に残るのだとしたらそれは嫌だ。
1,400円。
絶妙なラインである。我が庭でもある日本橋のランチより少し安いくらいの価格、これをどう捉えるか。
行くことにした。
ヒルトンアメックスの決済修行中だからである。(え?)
ここでも無事、ヒルトンアメックスが背中を押してくれたのだ。
どうも、ヒルトンアメックスは新しい世界へ足を踏み入れさせてくれるのが得意のようだ。
さて、ネタバレのようなことはここではしたくない。
なので一言。1,400円を払う価値は十分にあった。
いや、むしろそれ以上だ。今年の映画界は数々の話題作が封切られ、それぞれに違った良さがあったが、自分の中ではそのどれもを凌駕した気がする。
鑑賞前に仕入れていた情報-予告編やポスターのことだが、これらすべてが観終わってからじわじわと効いてくる。
そして時間が経てば経つほど、本作のキーとなる2人組へ、静かに想いを馳せることになる。
上映時間の半分くらいは「我々は一体なにを見させられているのだ…?」と突っ込みどころ満載、これぞちいかわワールド、という感じで無条件に楽しませてくれる緩急の絶妙さも、また心地よかった。
ここで、少し主要登場人物の話を。
まず、ちいかわを見直した。
多少持ち合わせていた自分の認識では、ちいかわはどこか頼りなくハチワレに引っ張ってもらう存在だった。
でも今回、ちいかわはハチワレにも他のだれにも言わず、自分の心にとどめたことがある。
非常に重い選択。これができたのは、ちいかわが2人組を自身とハチワレに重ねたからではないか。友達っていいな。
次に、うさぎに敬服した。
そもそも島への旅話がもちあがった時、ちいかわは一瞬逡巡したし、ハチワレは報酬や景品に目を奪われて決断したきらいがあった。
でもうさぎは多分報酬や景品がなくても一目散に旅に出ただろう。
そして旅先で理不尽な目にあっても表情一つ変えず自分のペースを貫く。
これ、やろうと思っても簡単にできることじゃない。うさぎ自身も意識してやっていることではないため、仮に出版社から自己啓発系の書籍執筆依頼がうさぎに来たとて彼は何も書けないだろう。シンプルに、すごい。
そして、ハチワレが歌った、「いつまでも、絶えることなく、友達でいよう」。
「いつまでも」の優しさがもたらした、一縷の光と残酷な宿命。ここに本作のすべてが詰まっていると言っても過言ではない。
観ていない人にはなんのこっちゃだろうが、観た人であれば多少なりとも共感してもらえる部分があるのではないだろうか。
知人やヒルトンアメックスという存在がなければ、縁がなかったであろう、ちいかわの世界。1,400円をケチらずに本当に良かった。
生きていると、いつ、どのタイミングでお金を使うか、どの使い方が合理的か、といろいろ難しく考えてしまう時がままある。
そんな時はハチワレの名言「なんとかなれーッ」に身を任せてみるのも悪くないかもしれない。
